年収300万円時代は、たとえ教育費の準備という大きな目標を無事に達成したとしても、その後のライフプランは黄色信号が点滅しています。厳しい表現をすれば自分たちのこの先の人生を考えれば、「我が家の家計では大学進学は無理だから」と子どもに進学を断念してもらうのが本来、無理のない選択といえます。ところが、親心というものはそう簡単なものではありません。「我が子のためなら」と無理して教育費を捻出し、飛んで火に入る夏の虫のごとく、自らライフプランを破たんに追いやってしまうようです。子どもの学費や生活費について、何割を負担するつもりであるのかという資料を見ると、所得が400万円に満たなくても、約半分の親が「全額負担するつもり」と考えていることがわかります。年収300万円の家庭では、教育費をすべて親が負担するとなると、色々な対策を講じたとしても、子どもが大学に通っている間は年間収支が数百万単位の赤字になってしまいます。子ども手当が恒久的に支給されたとしても、60歳時点での貯蓄残高は、老後の生活のために最低限必要といわれる3000万円に遠く及びません。それにもかかわらず、多くの親が「教育費は全額負担するつもり」と腹を括っているのです。教育社会学の専門家でもある小林雅之氏は、著書『進学格差』のなかで、所得が高くなくても子どもの教育のために重い教育費の負担をしようとする状況を「無理する家計」と表現しています。大学へ行かせるということは、一時的に大きな出費を伴うだけでなく、親のライフプラン、子どものライフプランの先々まで計り知れない影響があります。近視眼的に「どうやって教育費を準備するか」ということばかりを考えるのではなく、「自分たちのライフプランはそれでも大丈夫なのだろうか」「子どものライフプランにとって、どんなメリット、デメリットがあるだろうか」といった視点からも俯瞰してみることが重要といえます。
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