出版翻訳を目指す学習者の大部分は、下訳の仕事を求めている。やさしく、短く、時間が十分にあり、上訳者が丁寧に赤を入れてくれる仕事を求めている。産業翻訳を目指す学習者の大部分は、専門分野の知識は自分にわかるはずがないと考えている。コンピューター関連のマニュアルなら、そこに書かれている内容は自分に理解できるようなものではないが、日本語にしておけばユーザーは理解するはずだと考えている。翻訳教育産業は、翻訳に対して最終責任を負いたくないが、翻訳というあこがれの仕事にかかわっていたいと考える人たちを大量に生み出している。翻訳とは外国の知識を学び伝える仕事である。学ぶことにも伝えることにも全責任を負う仕事である。最終責任を負う点こそが翻訳の魅力の源泉である。翻訳はきびしく、むずかしい仕事だ。だからこそ翻訳は面白く、一生をかけて悔いのない仕事なのだ。